種が登れるか
自分のいる場所を測るための道具です。動詞が四つしかありません。 点数は付けていないので、自分で当ててください。
何のために作ったか
苦しかったことに、名前を付けて分けておきたかったのだと思います。
自分の身に起きたことを、性格の問題や運の問題として畳んでしまうと、 同じことがまた起きたときに何も言えません。名前を付けて、 どこで何が起きたのかを分けておけば、次は少し早く気づけます。
そしてもうひとつ。物差しを一本持って、世の中を見てみたかった。自分の会社だけを見ていると、それが特殊なのか普通なのかが分かりません。 同じ軸で外の会社を測れば、それが分かります。
なぜ、この軸になったか
考えて作ったのではなく、見たものがあって、それがそのまま軸になりました。 最初の三つは自分の現場で、四つ目は外の事例からです。 並べ方だけ、あとから動詞に直しています。
止めた人はいなかった。行き先が無かっただけだった。渡した先が既に埋まっている部屋なら、通っても椅子は増えない。
能力のある人が、能力のせいで止まるのではない。段の数だけ判断が挟まり、そのたびに別の物差しが乗る。段が長ければ、誰が座っていても同じことが起きる。
種が無いのではなかった。上げ方が分からないので、上がらなかった。そして積んだことを書く欄も、どこにも無かった。
形を出したつもりで、作り方も一緒に出ていた。外注先に聞かないと、自社で答えられない状態になっていた。これは外の事例で、後から足した軸になる。
四つの動詞
1持つ作り方が、内側にあるか
- ×欲しい機能だけを指定して、外に出している。機能と、それを実現している技術が、内側で繋がっていない
- △仕様は自分が書いている。ただし、なぜその仕様なのかは相手に聞かないと分からない
- ◯材料も寸法も基準も内側にある。形を作るところだけを出している
- 外から測る
- 仕様を誰が持っているか。材料、寸法、強度の基準を自社が握っているなら、出しているのは形だけになる。完成車の会社が強いのはそこで、作り方の最適化まで手元にある例もある。ほかに、特許の出願人と発明者が自社だけか外注先との共同か、沿革に売った事業を買い戻した履歴があるか。
- 自分の会社で測る
- 外注先に「なぜこうなっているのか」を聞いたとき、自分の側の誰かが代わりに答えられるか。見積もりが妥当かどうかを判断できるか ── できないなら、金額は膨らむ。そして一番速いのは、この問いになる。相手が明日やめたら、続けられるか。
2測る積んだことを書く欄があるか。物差しは合っているか
- ×積んだことを書く欄が無い。そして本業の利幅が、そのまま新しいものの基準になっている
- △別の基準はあるが明文化されていない。説明のたびに本業と並べられる
- ◯積んだこと自体を書く欄がある。新しいものには別の基準が、書かれた形である
- 外から測る
- 本業の営業利益率と、新規に求められる採算の基準。本業が崩れた時期があるかどうかも見る ── 合格ラインを決めていたものが消えると、線は下がる。そして、人の蓄積や研究の蓄積を指標として出しているか。出していない会社は、そもそも数えていない。
- 自分の会社で測る
- 今年やったことのうち、紙に書ける欄があるのはどれか。無いものは、していないことになる。そして、本業の利幅は、自分が持ち込もうとしているものの利幅より、どれくらい高いか。高いほど話は通らない。
3通す需要に繋がる経路と、通す様式があるか
- ×研究は事業部の損益に繋がっている。そして、上げ方がどこにも書かれていない
- △いまの顧客に繋がっている。改善はよく通るが、まだ無いものは通らない。様式は、選ばれた人だけが知っている
- ◯まだ客のいない市場を置く欄がある。通す様式が、職種を問わず配られている
- 外から測る
- 研究開発費が誰の損益に載るか(有価証券報告書のセグメント情報。各事業に配賦されていれば、事業部の物差しがかかっている)。参入領域を決める表に、現在の市場と将来の市場が分けて置かれているか。研修体系に財務と戦略が階層・職種を問わず並んでいるか。共通の仕事の型に名前が付いているか。
- 自分の会社で測る
- 今日、企画書を出そうと思ったとき、その様式が手に入るか。実物を見たことがあるか。そして、自分が答えようとしている需要を、いま誰かが口に出して言っているか。言っていないなら、その経路には乗らない。一人に断られたら終わりか、別の誰かに持っていけるか。全員の yes が要る経路は、段の数だけ死ぬ。
4置く椅子は、決めなくても増えるか。運んだ人が、そこに座れるか
- ×既存の部屋に入る。椅子は増えない
- △専用の部や室はある。ただし作るのも畳むのも、その都度の判断で決まる
- ◯育ちに合わせて、規則で椅子が増える。運んだ人がそこに座れる。駄目なら元の椅子に戻れる
- 外から測る
- 最後に新しい事業部または子会社が生まれたのはいつか。沿革と組織図で分かる。二十年ひとつも増えていないなら、椅子が増えない場所である。増えていたら、次に見るのは作られ方。売上が線を越えたら部になる、のように規則で書かれているか。それとも組織改編のたびに作られ、畳まれているか。そして新しい部を率いているのが、運んできた本人か。
- 自分の会社で測る
- いま運んでいるものは、通ったらどこに入るのか。入る先が既に埋まっている部屋なら、通っても自分の席は消える。そして、どこまで育てば部になるのかが書かれているか。書かれていないなら、椅子は誰かの判断を待つ。駄目だったとき、元の仕事に戻れるか。
計器は、木の持ち歩ける形です。木は「なぜ死ぬか」を説明し、計器は「この場所では死ぬか」を測ります。 国の規模の数字は漏斗に置いてあります。
三度、組み直しています。最初は見たものが三つあって、それがそのまま軸になりました。 次に、実際に会社を測ってみたら説明がつかず、軸を足したり直したりしました。 三度目に、軸どうしが独立していないことに気づいて、貯まるものと流れるものの観点から、動詞で並べ直しました。いまも、症例を一つ当てるたびに、どれかの動詞の中身が書き直されています。 壊れたので直した、を繰り返しています。たぶん、まだ足りません。
四つとも要ります。ひとつでも × なら、種は登りません。生まれる条件は全部揃って初めて満たされ、死ぬ側はどれかひとつで足ります。 精神論ではなく、算数の話です。
そして四つとも ◯ でも、登るとは限りません。必要な条件であって、十分な条件ではない。ここを誤魔化すと、 この道具は占いになります。
どう使うか
出るためではなく、いる場所で何が起きているかを知るために使ってください。
会社を測るために作りましたが、四つの動詞は会社だけの話ではありません。 個人なら、作り方を自分の中に持っているか、起きたことを自分の物差しで数えているか、 誰に届けるか、使う先があるか、になります。 前の二つは自分の経験からしか作れません。後の二つは、時間と金で積めます。貯めるものと、流すもの。形が同じなら、同じ物差しが当たります。
盤の上で位置を変えても、盤は変わりません。移った先が同じ形なら、 同じことが起きます。それに、大半の人は明日辞められない。 辞めるかどうかより先に、いま自分が何に当たっているのかが分かるほうが、 たぶん役に立ちます。
測るときは、その会社に天才が入ったと仮定してみてください。一番能力の高い人を置いても種が登らないなら、それは能力の問題ではありません。 この置き方には副作用があって、誰も責めなくて済みます。悪い人を探さずに、構造だけが残る。
欄が埋まらないことがあります。埋めないでください。分からないところを推測で埋めると、それらしい結論は出ますが、 道具としては死にます。空欄のまま置いておくほうが、後で効きます。